会頭よりご挨拶

慶應義塾大学外科学教室 北川 雄光 この度、伝統ある日本外科学会の第120回定期学術集会を担当させていただきますこと、皆様に心から感謝申し上げます。また、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、4月から8月へ会期の延期、さらに現地開催を断念して完全Web開催への変更など、異例の事態が生じました中で会員の皆様におかれましては、ご理解と温かいご支援をいただいておりますことに心より御礼を申し上げます。
 学術集会は、双方向のディスカッションによる学術交流のみならず、新しい人間関係を構築する大変貴重な機会です。今回、日本外科学会初となるWeb開催においてもこれを可能な範囲で実現するために、様々な工夫を凝らしました。8月13日から15日の間、座長、演者の皆様には遠隔地からWeb会議形式で各セッションに参加していただきます。国内のみならず海外からもWeb-Discussantとして多くの皆様に加わっていただき、全17会場をライブストリーミングによるリアルタイム配信で中継し、現地開催さながらの活発な議論をしていただきます。会期終了後は、約2ヶ月間にわたりまして、発表データとライブディスカッションの模様をアーカイブ配信いたします。また、このアーカイブ配信期間もQ&A機能を用いまして、演者に対する質問や視聴者への応答ができる仕組みを構築しました。こうしたWeb開催ならではの新しい形の学術集会の活用法と楽しみ方につきましても、このポケットプログラムに掲載させていただきました。

 さて、120という数字は人間の生涯においては「大還暦」とも称され、伝統ある日本外科学会もこの「大還暦」を迎え新しい時代の起点に立っております。この大きな時代の転換点に、あえて外科学の原点に立ち返り若い世代が勇気と希望を抱いて次の時代に歩み出せることを切に願って、本学術集会のテーマを「命と向き合い 外科医として生きる-To live as a surgeon: Looking life in the eye-」と致しました。直接的に生命を左右しかねない医療は、ともすると昨今の若い世代からは敬遠されがちです。厳しい修練や医療行為そのものに伴うリスク、ストレスがいわゆる「外科離れ」を助長しているとも言われています。この記念すべき定期学術集会において、今一度、命と向き合うこと、外科医として生きることの喜び、誇りを皆様とともに見つめ直したいと考えています。
 そのために今回は二つの特別企画シリーズを設けました。特別企画「命と向き合うために」では、外科手術でしか救えない命に立ち向かう高難度手術にスポットを当て、これを実現する様々な技術革新の現況、将来像に迫ります。8K/3Dシステムによる高精細画像がもたらす外科解剖学の新展開、次世代手術支援ロボットの幕開け、ご献体を用いた手術手技研修のあり方、人工知能(AI)を駆使したSociety5.0を舞台に外科医はどう生きるのかなどのテーマを取り上げます。特別企画「外科医として生きる」においては、重圧を跳ね除けて栄冠を勝ち取ったオリンピックアスリートの皆様にもその想いを語っていただきながら、自らを磨きあえて困難な手術に立ち向かう外科医の精神構造に迫ります。また、世界、地域を舞台にそれぞれの夢に向かって奮闘する外科医や様々な分野で活躍している女性外科医の皆様の姿を通して、外科医として生きていくことの素晴らしさを伝えるとともに解決すべき課題について皆様と共に考えます。
 学会2日目には第120回日本外科学会定期学術集会記念式典を開催いたします。この式典においては、若手外科医、研修医の皆様に「未来を担う外科医からのメッセージ」を披露していただきます。100名を超える応募をいただき、ビデオ審査、オーデイションを経て、男女3名ずつ計6名の若手外科医が演者として選出されました。当日は、次の時代を担う外科医たちの熱い思いに皆様とともに耳を傾けることが本学術集会のハイライトになるものと期待しています。また、こうした若手の思いを受けて、日本外科学会がどのような将来像を描き、どのような行動計画を実行して行くかを考え、森 正樹理事長、各サブスペシャルティ領域の指導医の皆様からの「未来のための今:横浜宣言2020」を発表する予定です。また、式典をより荘厳に、かつ生き生きと進めるために全国の外科医の皆様による合唱や演奏も予定していましたが、現地にお集まりいただくことが難しくなりました。そこで、それぞれのパフォーマンスをリモートにてお届けする予定です。この記念式典で皆様がそれぞれの立場で、色々なことを感じ、思いをはせていただければ幸いです。
 現在、外科診療にも大きく影響を与えているCOVID-19についても緊急企画を設けました。学会初日にはCOVID-19診療の最前線で活動している専門家による緊急セミナーを企画しました。学会3日目には今後もCOVID-19感染拡大の危険が拭い去れない中での外科診療のあり方を緊急パネルディスカッションにて模索いたします。演者の先生方には、日本外科学会としての取り組み、国内外の施設での現状と今後に向けた課題などを討論していただきます。
 こうした特別企画、記念式典、緊急企画には会員の皆様はもとより、これから将来の進路を決定する医学部生や初期臨床研修医の皆様にも是非参加していただきたいと考えています。そのため本学術集会では医学部生に加えて初期臨床研修医も参加費無料といたしました。皆様の周りの医学部生、初期臨床研修医の皆様にお声をかけていただきたいと思います。
今後、1万数千人以上の人が移動し、一堂に会する学術集会を開催することが困難な時代が続く可能性がございます。また働き方改革の中で、学術集会参加のそのものが外科医の負担となっている側面もございます。そうした状況の中で、今回は未来に向けた新しい形の学術集会のあり方を提案したいと思います。会期が8月のお盆の時期となりますが、お仕事の合間、あるいはご家族との休暇中など、様々な場所や形でご参加いただける完全Web開催となりますので、どうか一人でも多くの皆様にご参加いただけますようよろしくお願いいたします。

第120回日本外科学会定期学術集会 会頭
慶應義塾大学外科学教室 北川 雄光

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